大野農園の紹介
大野農園は、富有柿(ふゆうがき)を中心に生産直売。約70年の歴史がある柿専門農家です。
富有柿発祥の地に近い岐阜県本巣市糸貫にあり、有機肥料を有効に使い、早秋柿、富有柿、太秋、渋柿・蜂屋柿の栽培に取り組んでいます。
富有柿の食べ頃に通販でのお取り寄せ。贈答用だけでなく、規格外のご家庭用も柿農家から食べ頃に産地直送で新鮮。
生産直売所では10月に早秋柿、11月12月に富有柿を店頭にて直接販売。ホームページに載っていない訳あり商品も。
富有柿の育て方、栽培・特徴を見える化したサイトの商品は・・・安全・安心で贈り物、お取り寄せに最適です
柿の育て方を季節とともに下記に紹介しています。
柿の育て方
柿の育て方
剪定 土作りと肥料 粗皮削り 接木 草刈 摘蕾 受粉 人工授粉 生理落下 新梢の誘引 摘果 潅水
富有柿の着色と肥大 早秋の収穫と販売 富有柿の収穫と販売 柿作りの参考書
自然災害
台風対策 カラス対策 雹(ひょう)の被害 霜の被害
柿の病気
うどんこ病 炭疽病 落葉病
柿の病害虫
ヒメコスカシバ フタモンダラメイガ カメムシ フジコナカイガラムシ カキノヘタムシガ イラガ類 アメリカシロヒドリ
柿の歴史
富有柿の歴史と特徴
大野農園直売所の歴史と看板
旧富有柿直売所 新直売所建設工事 案内看板
用水路・排水路の補修
用水路・排水路補修
剪定(せんてい)
柿の栽培は、柿の木が休眠している12月~2月が剪定時期となります。
大きく、おいしい柿を作る為、剪定で無駄な枝を切り、樹全体に太陽光が当たり、光合成が充分に行われるような樹形を作り、色がよく、糖度が高い富有柿が収穫出来るようにします。
背中にバッテリーを背負って、電動ばさみで剪定(直径3cm位の太さまで切れます)太い枝はのこぎりで、幹はチェーンソーで切ります。
剪定した太枝の利用方法
剪定ででた柿の枝は広葉樹の為、薪ストーブの燃料に適しています。頂上に波板トタンを被せておけば、秋には乾燥して燃えやすい立派な薪の出来上がりです。
我が家では、剪定の時に出来た太枝、中枝、ご近所から分けて頂いた枝を11月から薪ストーブの燃料として利用するために保管しております。
なお柿の枝は、斧で割りにくいのでチェーンソーを活用して薪ストーブに入る大きさに長さと太さに切りそろえてから乾燥させましょう。
またこの写真の量(高さが1m位、長さが16m以上)で約1年分ですので薪ストーブを導入する時は、薪置場の確保も重要なので検討しましょう。
我が家の冬場の暖房は、薪ストーブのみで賄っており省エネです。
枝の焼却
剪定した枝は、越冬する病害虫の減少・減農薬により安全な柿を作るため、出来るだけ集めて焼却すると良いでしょう。
大枝・中枝は薪ストーブ用に蓄え、冬に暖房に活用します。
この時期の柿の枝は、水分が少なく剪定直後の枝でも小枝から順次燃やせば太い枝まで焼却できます。
隣のかきの枝が焦げないように、波板トタンでカバーして作業。
太枝の切り口の癒合材(ゆごうざい)
剪定の時に太枝を切り落とした切り口には、癒合材を塗布して病原菌の侵入を防ぎ、枯れ込みを防止し、切り口の治りを早めましょう。
柿の木に適した癒合材としては、トップジンMペースト(日本曹達)などが良いでしょう。大野農園は、トップジンMペーストを使用しています。
剪定したら、当日又は翌日には塗布するようにしましょう。癒合材は、塗布した後乾燥するのに1日程度かかりますので天気のいい日を選んで作業するのがおすすめです。
切株撤去
柿の木が混みあって間伐した切り株をバックホウを使用して掘り起こしています。枝が広がっている位まで根が広く台風にも耐えれるよう伸びてタコ足のようです。乗用草刈機での草刈、摘蕾、摘果、防除、収穫などの作業にも支障がありますのでなるべく掘り起こします。
畑のph(ピーエッチ)測定
土壌が除草剤や化学肥料等で酸性化してくるため、土作りは土壌phを測定することから始めるとよいでしょう。
スコップで柿の根がたくさんある20cm前後土を掘って、市販のph測定器でphを計ります。
富有柿に適したphは、5.5~6.5の弱酸性が良いと言われています。
酸性が強い場合は、苦土石灰を12月~1月頃に散布するとよいでしょう。
※phの読み方:第二次世界大戦の前後の化学情報はドイツから入ったため「ペーハー」とドイツ語由来で読まれていました。
今でも年配者に多い読み方です。
現在の日本では、計量単位規則により「ピーエッチ」と読むことが義務付けられています。
ph測定を行わない簡単な見分け方
すぎな(つくし)が生えるとこは酸性が強いですので、苦土石灰を散布すると良いでしょう。
富有柿に基肥を散布 2月~3月中下旬
富有柿は発芽する4月~6月に肥料分を多く必要としますので、この時期(2月~3月)に散布します。
1袋20㎏の肥料を背負って・・・。1本1本の樹勢を見て施肥量を調節しながら、10a当たり80kg~100kg散布します。
追肥は梅雨明けを待って、7月上中旬に果樹化成(12-8-10)2袋程度散布。有機肥料は緩効性のため、収穫期にまでチッソ成分が効いていると着色が遅れるため、追肥には有機肥料を少なめに。
有機肥料であるケイフン(鶏糞)、牛糞、豚糞等は肥効が遅く始まり、長期間肥効が続くため基肥のみに使用し、充分発酵した堆肥を使用する。表示の窒素量を計算の上、その量に応じて他の基肥を減らします。
軽トラック、運搬車、SS、乗用草刈り機等の重量で土壌が固くなるため、有機肥料(有機配合肥料でもよい)を毎年使用するように心がけて土壌生物を元気にして、柿の根を元気に保つ事により美味しい柿を育てたいものです。
年間の合計施肥窒素量は基肥、追肥を含めて成木園10a当たり14kgを目安に施肥の設計。
基肥の施肥時期は堆肥は肥効が遅く始まる為:2月中位に、有機配合肥料:2月~3月上旬、化学肥料のみは肥効が早く始まるため:3月中下旬が良いでしょう。
最近の資材(肥料等)の価格高騰を考慮すると、化学肥料を減らしてケイフン等を使用して経費を削減するのも一つの方法でしょう。
以下に年間の使用計画の参考を添付します。
*有機肥料を使用すると土壌生物が元気になり、よい土を作り、作物がおいしく育つといわれています。
*肥効率は、家畜ふん堆肥中のチッソ成分の肥料としての効果を、化学肥料と比較した指数で概ねケイフン0.7、牛糞0.1、豚糞0.2です。
*家畜ふん堆肥の窒素含有率は概ね、ケイフン3.8%、牛糞1%、豚糞1%です。(製造元により窒素含有率の数字が大きく異なりますので一例です)
*苦土石灰1袋20Kgには石灰が53%=10.6Kg ケイフン1袋15Kgには石灰分が15%=2.25Kg位含まれている。
したがって、ケイフン5袋使用した場合、苦土石灰1袋の割合で減らす。
ご注意:上記の土作り、基肥、追肥等については、大野農園のような平坦水田地帯の例でありますので土壌気候、傾斜地等耕作の条件が異なれば、施肥量、施肥時期等も大きく変わりますので、それぞれの地方の農業改良普及員の指導を受けられることをお勧めします。
粗皮削り(そひけずり)
樹の皮の下に隠れて越冬している、樹の幹を食害する樹幹害虫ヒメコスカシバ等をはじめカイガラムシ、柿を食べる害虫などを退治するために、木の表面の粗皮を高圧洗浄機を使用し、100㎏以上の高圧で柿の木1本当たり100~200L位の水を使い水を吹きつけて、皮を剥がして病害虫を取り除き、農薬の使用を減らしより安全な柿を育てます。
富有柿の成木は、脚立の上から枝の上面の粗皮をきれいに削り取ります。
富有柿全体は3年に1度位、木の又、節は樹幹害虫に依る食害被害が多く、毎年か1年おきに削ると良いでしょう。
柿の休眠中(発芽の前)の3月上旬までに作業を終えるとよいでしょう。
高圧洗浄機一式の価格は機種にも依りますが、10~20万位で購入できます。
接木(つぎき)
枝の欲しいところに接木をします。
また接木は、元となる台木と接ぎ穂の品種が異なってもできます。
当農園では、主に西村早生に富有柿を接木して品種の切り替えを行っています。
接木の手順
①2月の剪定時に必要な穂木を取り、芽が動かない(光・温度等で芽吹かない)ように黒色のビニールで乾燥しないよう2重に包んで、冷蔵庫に保存します。
②2芽又は1芽で切取り、乾燥防止のためロウつけを行います。
③接ぎ木の時期は4月には柿の木の根が活発に動き始め、水分と養分を吸い上げ始めるこの時期に接ぎ木をすると、活着が良い。5月でも接ぎ木できます。
実生苗(木の根本からはえた芽)に接ぐ時→3月下旬~4月上旬
高接ぎする場合→4月中旬~5月上旬が樹液が上がって適期です。
詳しい柿の接ぎ木にいては「カキづくりQ&A」を参考にして下さい。
大野農園では早秋の販売が増え、生産量が不足してきましたので、早秋(そうしゅう)を接ぎ木を行いました。接ぎ木は今年1年は収穫できませんが、来年は立派な早秋が収穫できます。 早秋は10月上旬~中旬に真っ赤に熟し収穫できる、今評判の完全甘柿です。
接木で使用しているテープは、ニューメデール(商品名)です。
草刈(くさかり)
4月~9月富有柿も大きく成長しますが、雑草も伸びが早く草刈りが大変です。平成20年から導入した乗用草刈機(RBM210)に依って、雑草は効率よく刈り取ります。
開花の時期は遅い霜の被害を受けやすく、草を刈り取った方が遅霜害防止には良く、又開花の時期は富有柿の木が水分を多く必要としており、土壌水分の蒸発防止にもなります。真夏の日照りの時は草を刈取り、水分の蒸発防止に努めましょう
座席の下の直径90cmのバーの先端に刈刃を装着、高速で水平回転し雑草を刈り、左手で前進、後退と無断変速兼用のレバーで操作します。小型ですが21馬力のハイパワー。
安全、安心な早秋、富有柿、蜂屋柿、渋柿を育てるため除草剤の使用を減らすと共に、病害虫防除の回数を極力減らしています。
摘蕾(てきらい)
枝になる蕾(つぼみ)の数を減らして栄養を一つ一つの柿に集中して大玉にする目的の作業のことです。
芽が出てつぼみが7個くらいついています。今年出たばかりの枝に一個づつ蕾を残します。左上写真は、上の2個の蕾は下の蕾に比べて極端に小さく、遅れて出た蕾ですから全て取り除きます。右の上から2番目を残すとよいでしょう。
右上の写真では、先端上向きが小さく遅れて出た蕾です。右下向きを残すとよいでしょう。
柿の実の向きや、大きさ、傷、形を見ながら数を減らすことで大きな柿が実ります。
令和4年の摘蕾は、1巡目4月21日~5月10日、2巡目5月11日~5月26日、3巡目5月27日~6月4日で周れました。
令和5年の摘蕾は、1巡目4月14日~5月5日、2巡目5月5日~5月20日、3巡目5月20日~6月1日で周れました。近年になく早いすすみでした。
令和6年の摘蕾は、1巡目4月18日~5月
生理落果後に、8月中旬までに最後の摘果を行い、売り物になりそうな柿だけを育ててゆきます。
○やさしい柿の摘蕾(てきらい)の方法・・・残す蕾(つぼみ)、果実は
1)夏に日焼け防止のため、下向きか、横向きの蕾。
2)枝の先端の蕾が、葉が大きい為大きく育ちます。
3)柿が成長してこぶし大になっても、枝にふれて傷のつかない枝の外向きの蕾
4)へたが4枚で、形が揃っている、茎が太く短い蕾を選ぶと良い
へたが大きい蕾はへたすきが少なく大玉果に育ちます。
5) 葉は出来るだけ落とさないように。1個の柿につき葉が最低でも20枚以上あるようにしましょう。
葉が5枚以下の枝は、柿が大きくならないので蕾を全部取り除く。
6)下枝で日当たりの悪い位置の蕾は、極力減らす。
7) 摘蕾は養分のロスを極力減らすため、1回目の摘蕾を花が開く5月20日頃までに終えると良い。
8)摘蕾が一巡したら、始めの畑に戻って遅れて出た蕾を取り除きます。
遅れて出た蕾は柿が大きくならないので全部取り除きましょう。
9)花カスが柿に付着していると傷になるので、摘果の時にあれば取り除きましょう。
10)腰が高く、形の良い、大きい果実。
11)蕾の元から出てる柿の葉が大きい方が、陽光を沢山受け、大きな柿になる。
※ 早秋柿は生理落果が多く、果形が乱れやすい品種のため、1枝2蕾残して生理落果後の蕾数を多くすると、摘果の時に型の良い柿を選んで残せます。
受粉樹高継(じゅふんじゅたかつぎ)
高接ぎで、雄花を増やして風による花粉の飛散により自然交配を促します。
摘果作業の繁忙期に手間がかからず受粉確率が上がるでしょう。
早秋柿は、10a当り5~6カ所高接ぎするとよいでしょう。
【ミツバチの導入】(ミツバチのどうにゅう)
授粉のだめ、圃場(柿畑)にミツバチの巣箱を導入しましょう。
ミツバチの力を借りることにより、柿が授粉していきます。
ミツバチの行動範囲は半径2kmと言われています。
しかし、気温が低いと活発には動いてくれません。
ミツバチの導入日
令和5年 5月10日~5月25日
令和6年 5月9日~5月23日
人工授粉(じんこうじゅふん)
早秋柿は、生理落下(自然に果実が落ちること)が多いので人工授粉により防止します
下の写真は、人工授粉を写真にて紹介しています。雨の日はお休みですよ
令和5年 5月10日~5月18日
令和6年 5月11日~5月17日 に行いました
授粉作業の道具は、棒の先に100円均一で買ってきた化粧筆を取付て作業しています
授粉作業手順
①朝一番で授粉樹の咲いた雄花のみ採取します
②涼しくて風通しのよい日陰で乾燥させる
③夕方雄花から花粉を採取し小さい容器に集めて、冷蔵庫で保管します
④翌朝新しく咲いた雌花に、授粉を行います
花粉の量が少ない時は、増量材として「石松子」を入れると良いでしょう
生理落果(せいりらっか)
成長中の青い実(幼果)が自然に落ちてしまう現象。1回目(前期)は6月中旬~7月中旬ごろにかけて、2回目(後期)は8月の後半頃に起きます。
生理落果は、樹体の健全性維持のために、着果数を自然調節する現象です。
急激な環境変化が原因と言われていますが、以下の複合要因の場合があります。
①受精不良 …天候不良で自然授粉ができなかったり、低温でミツバチによる授粉等が十分できなかった果実が、落下しやすいです。
②水分の過不足…乾燥状態の長期化、梅雨による湿潤状態の長期化、乾燥から急激な雨の長期化などにより根に負担がかかります。
③日照不足 …曇空・降雨が続くと、光合成が少なくなり栄養不足となります。
④養分の過不足…窒素不足または、窒素過多によっても引きこされます。
生理落下は、品種によって差が激しいですが、富有柿は少なめです。
早秋柿は生理落下が激しいので、当農園では摘果で1枝2果(今年の枝1につき果実2個)として着果量を確保しています。
生理落下後、摘果で1枝1果に調整しています。
平成22年度 早秋柿を育成し始めて一番生理落下が激しかったです。平年の2割程度しか残りませんでした。
令和元年度 生理落下が多い年となりました。7月20日現在早秋柿は例年の5割程度、富有柿は例年の8割程度の着果数と推測しています。5月の開花時期は天候に恵まれ早秋柿には人工授粉も出来ました。このため作柄にも大きな期待をしておりましたが、昨年の度重なる台風・猛暑・干ばつなど柿の木にはとても厳しい環境がこの生理落下に現れたのかと感じております。
令和2年度 早秋柿は、平成22年以来の生理落下が激しく、平年の3割位の着果数でした。雨量が5月20日~6月9日迄計18㎜。梅雨入りの6月10日~14日迄の5日間で153㎜の大量の雨があり、この極端な水分変化が大量の生理落下の原因となった可能性があります。5月の開花時期は天候に恵まれて、人工授粉も十分にでき期待が大きかっただけに残念です。
令和3年度 授粉の時期に雨が多く、ミツバチの働き悪く(なまけバチが多かった)早秋柿の生理落下は、激しかった。富有柿は、少々生理落下がありましたが、ほぼ平年並みの着果数が確保できました。
令和4年度 梅雨の時期も日照時間が長く、定期的に降雨もあり、生理落下が特に少ない年でした。早秋柿・富有柿ともに大豊作でした。
令和5年度 梅雨に入り日照時間が短いため、早秋は特に生理落下が多く心配です。
新梢の誘引(しんしょうゆういん)
誘引は摘蕾の見直しの頃から梅雨時の間に、翌年のよい結果母枝を作るための作業です。
上面枝は養分の勢いが良すぎるので、少し落ち着かせるため斜め上向きに曲げます。
♯16の針金(※1)を使用し、まず枝の根元に引っ掛け元枝の裏を回って下から手前に出し、曲げる枝をしなわせて枝を固定する。
針金の長さは、細い元枝は40cm、中位の元枝は50cm、太い元枝は60cm程度が使いやすいです。
ひと手間掛けると、翌年の花芽の良い結果母枝として活用できます。
曲げた枝は、7月末には木質化して安定しているので針金を取り外しましょう。
そのまま放置しておくと針金が枝に食い込んだり、傷になったりするので良くありません。
今回の誘引は、♯16の白の被覆線を使用しましたが、取外しに見つけやすかったです。
※1 1.6㎜径この番手(太さ)の針金は、工具を使用せず指で曲げられて作業性が良い
摘果(てっか)
生理落下が終ってから摘果を始めるのが良いでしょう。
柿の木に残っている果実の数を調整するために落とす作業です。
残すのは、日焼け、奇形、傷などがない良質な果実を選びましょう。
残す果実の数は、結果母枝(去年成長した枝)の長さを参考に残す数を決めましょう。
結果母枝長さ 20cm未満⇒1個 30cm未満⇒2個 40cm未満⇒3個 50cm未満⇒4個 程度が良いでしょう。
残す数を適正にして、大きな柿を目指しましょう。
雄花の果実(禅師丸・赤柿等)は、授粉後に全て落とすと病害虫発生が抑えられてよいでしょう。
果実の頭に花カスがある場合は、傷・病気(灰色カビ病)等の原因となるので取り除きましょう。
潅水(かんすい)
地球温暖化のためか、近年夏の気温が平年を大きく上回り降水量が少なく、雷に依る降雨も減少傾向で、柿の木の畑はひび割れが出来るほどです。
富有柿の木は水不足により、葉が垂れ下がるような水ストレスを与えると、ヘタすきの原因にもなり、又樹体に水分が少ないと、柿の果実の日焼けの原因にもなり、果実の肥大が妨げられるため、早めの灌水が必要です。
1週間以上雨が降らない時には、用水路の水口から潅水又は用水から揚水ポンプで汲み上げています。(毎分約600Lの揚水能力)水不足を解消して光合成を促進し、味の良い柿を大きく育てます。
日照りが続く時は、雑草を伸ばしていると雑草が土壌から水分を吸い上げ、雑草の葉面から水分の蒸発が起こるため、雑草を刈り取ったほうが土壌の水分が奪われない。ちなみに裸地と雑草がある場合を比較すると5割増し位土壌の水分が奪われやすいというデータがあります。
【日焼けの富有柿】 : 7月~9月
平成30年、今年は特別な異常気象で7月9日の大雨以来、8月12日まで1ヶ月以上雨が全く降らず、上のような日焼けの富有柿が大量に発生しました。
毎日柿畑の灌水に追われ、その上灌水ポンプのエンジンが故障し、修理が間に合わず新品を購入する羽目になりました。
令和5年は、7月~9月と大変高温で日焼けが多数発生しています。今年の柿は、家庭用・10kg箱が多数見込まれます。
令和6年は、7月26日から8月15日、まで36℃以上の高温でかつ雨がまったく降らず日焼けが多数発生しています。8/15の雨も2cmほどでまったく不足しています。家庭用が多くなりそうで心配です。
台風対策(たいふうたいさく)
台風が来ると、枝折があります。また枝が折れなくても、柿の落下・傷柿の増加等があます。
管理機で溝立てをして排水対策をするとよいでしょう。
草の少ない2月から3月ごろが作業が容易です。
台風前は、竹などで支柱を多くして強風に備えましょう。
上の写真は、2反(20a)分に使う竹の量です。
湿気が多いと、保管中の竹が虫に食べられたり痛んだりします。竹置場の下は、風通しを考慮し30cm位開けると良いでしょう。
台風後は、折れた枝・柿等を処理し病気に備えましょう。
雹(ひょう)の被害
雹が降ると果実に当たった部分は、裂傷又は黒く変色し商品になりません。葉の部分は、穴が開き光合成が減少し翌年の花芽分化に多大な影響があります。
平成26年8月22日は、本巣市から岐阜市にかけて雹と突風による被害がありました。当農園では渋柿の畑を中心に被害がありました。渋柿の収穫量は平年の半分くらいでした。
事後対策は、
①幹や太枝は切除したら癒合材を塗布する。
②折れた新枝は、切り戻す。
③切り口から病原菌が入りやすいので殺菌剤を薬剤散布する
などがよいでしょう。
霜(しも)の被害
霜が降りると柿が美味しくなると言いますが、-2℃以下位になると柿が凍結し細胞組織が壊れ、融けると軟果となり商品価値はありません。柿農家は大損害になります。同じ気温でも畑により場所により被害の大きいところと全くない所があります。下の写真は平成25年11月29日の霜の被害です。
カラス対策(たいさく)
早秋柿のカラスよけの糸:7月中
令和2年からのカラス対策は、早秋柿の樹全体にロックミシン糸(躾糸)を張り巡らせる方法です。ミシン糸はそれ程強度は無く両手で引けば切れる程度ですが、カラスの羽に引っ掛かり効果がありました。
カラスはホバーリング出来ず、体重がある為必ず中枝以上の太さの枝に止まって早秋柿を食べます。そのような枝に接近出来ないように、ミシン糸を張り巡らせます。
7月末に糸を張ったけれども太秋は10個くらいカラスに食べられました。その後糸を追加して張りました。
早秋柿は、糸のおかげで食べられていません。効果抜群です。
糸張りの道具を作成しましたので紹介します。
作成のポイントは、棒よりも管を10cm位伸ばすと使いやすいです。
材料:長い棒 1本 竹が軽くて使いやすいでしょう
長い管 1本 丈夫で軽い7~8㎜位の管 古いテレビアンテナ管(アルミ管)を再利用しています
糸巻固定金具 1組
カラスは隣の稲刈り後の水田でコメを食べてから、デザートに柿を食べに来るのでしょうか。団体様で来るので困ったものです。
一日に100個くらい食べられたときはショックでした。
食害が出る前早め(7月下旬まで)の糸張りが良いでしょう。
富有柿の場合「岐阜県農業技術センター研究報告」カキ’富有’の夏秋季の気温低下と果実肥大との関係はここをクリックによれば、一日の平均気温23℃以下の初遭遇日に成熟のスイッチが入るらしく、私が気象庁のデータを調べた処によれば令和6年は10月4日になり、ホームページを始めてから最も遅い年となりました。
初遭遇日が遅いと果実の肥大が不足して、小玉果になるようです。
令和6年の「9月の気温 日ごとの値、10月の 日ごとの値」を参考にしてください。
ちなみに平成17年以来の一日の平均気温23℃以下の初遭遇日は以下の通りです。
令6年:10月4日 令5年:10月2日 令4年:9月22日 令3年:9月8日 令2年:9月20日
令1年:9月21日 30年:9月11日 29年:9月 6日 28年:9月20日 27年:9月 6日
26年:9月 1日 25年:9月17日 24年:9月23日 23年:9月22日 22年:9月16日
21年9月12日 20年:9月21日 19年:9月29日 18年:9月 6日 17年:9月22日
※参考までに、平成17年~令和4年の一日の平均気温23℃以下の初遭遇日は、平均しますと9月15~16日になります。
早秋柿の収穫:10月上旬~10月中旬
お待ちかね収穫の秋です。柿の色を見ながら、美味しく熟した適期に収穫作業を行います。
これで皆球に美味しい早秋柿が届けられます。
緑の葉に赤い色の柿がとっても映えますね。
早秋柿の販売:10月上旬~10月中旬 10:00~15:00
通販は、8月より早期予約販売をしております。直売所開店日は、その年の気候により異なりますから、ホームページでお知らせします。
贈答用は、ギフト・贈り物に最適。また、色むら・傷など規格外の訳あり品は、かご盛りにしてお値打ちに販売しております。毎年試食販売を行っていましたが、今はコロナ対策で自粛中です。
真っ赤に熟し糖度が16度前後と高く肉質は柔らかく、果汁が多くて食味が良く、ヘタすき果がない、おすすめの早生(わせ)の完全な甘柿の新品種です。この早秋柿は名前の通り富有柿より1ヶ月半早く熟し収穫できる、極早生(ごくわせ)甘柿として有名な品種で、広島県安芸津町にある国の園芸試験場で誕生し2003年に品種登録されました。
生産状況
令和6年 台風の目だった被害がなく、収穫収量が多い年でした。奇形果が少なく、収穫後半は大玉となり豊作でした。
富有柿の収穫:11月上旬~12月上旬
秋本番、富有柿の収穫です。 近年は温暖化の影響もあって、9月、10月の気温が高いためか、富有柿の熟す時期が遅れる傾向にありますが、生産直売ですから早獲りせず、樹上で完熟させて、順次収穫しますので
糖度が高い富有柿をお届けできます。ギフト・贈り物に最適。
尚、大野農園では冷蔵の富有柿(冷蔵庫で保管して12月~2月に出荷)は販売せず、全ての富有柿を最もおいしい旬の時期にお届けしております。
生産状況
令和元年 猛暑、干ばつと厳しい年でした。特に早秋・太秋はカラスの被害が多く、毎日ロケット花火や柿の木への糸張りをしておりました。
9月の1日の平均気温23℃以下の初遭遇日が21日と遅く、やや小玉傾向でした。またカメムシの被害の多い年でした。
令和2年 梅雨入り直後の、大雨による生理落下が大量に発生。全体的に小玉傾向であり、ヘタスキ・カメムシ被害・大量生理落下と4悪が重なり厳しい収支となったが、唯一台風による大きな被害がないのは救いでした。
令和3年 10月の早秋柿収穫時に、雨量がほぼ0㎜で条紋が極端に少なく品質の良い早秋柿が大量に収穫出来ました。
富有柿は、10月下旬~11月上旬にかけてヘタスキ果と軟果のが思いのほか多い発生でした。その後は、大玉も多く、台風の影響も少なく近年では上々でした。
令和4年 開花の時期から収穫時期まで定期的に雨が降り、水分量が終始順調でした。
最大の懸念事項である台風の接近が一度もなく柿も大き目で、傷のない秀品が多く収穫出来た年でした。
令和5年 柿の着果数量が少なく小玉でした。着色の遅く、大玉の不足に苦労した年でした。
令和6年 台風の被害が少ないですが、カメムシ被害が甚大で、着色が平年より10日程おくれています。
富有柿の販売:11月~12月上旬 9:30~15:30
通販は、8月より早期予約販売をしております。直売所開店日は、その年の気候により異なりますから、ホームページでお知らせします。
近年は温暖化の影響もあって、9月、10月の気温が高いためか、富有柿の熟す時期が遅れる傾向にありますが、生産直売ですから早獲りせず、樹上で完熟させて、順次収穫しますので
糖度が高い富有柿をお届けできます。ギフト・贈り物に最適です。また、色むら・傷など規格外の訳あり品は、かご盛りにしてお値打ちに販売しております。毎年試食販売を行っていましたが、今はコロナ対策で自粛中です。
富有柿の表皮の白い粉は果粉(ブルーム)で、熟して美味しくなった富有柿の証しです。
柿直売所の場所はアクセスのページをごらんください。
病害虫の予防・防除は、発生予察情報を確認し適宜防除に努めましょう。
以下は、柿につく代表的な病気・害虫です。
うどんこ病
5月~6月の長雨ごろに伝染し、夏場は発病が停滞し、9月になり涼しくなると再び再拡大します。
葉表は黒い斑点、葉裏はうどん粉のような白い粉の斑点がでる。早期落葉を引き起こし樹勢低下を引き起こします。
風通しを良くし、日当りを良くすると発生を抑制できる。また、落葉の焼却・粗皮削りにより越冬する胞子を減少させるのが良いでしょう。
岐阜県病害虫防除所のうどん粉病へリンク
炭疽病
新梢・果実につく病害です。
5~6月頃は、新梢及び幼果に感染します。9~10月頃は果実に感染します。
長雨、排水不良、密植、肥料過多 等により病気に感染しやすいです。
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角班落葉病
1次感染は、5月~6月頃に主にして、7月頃から発病します。2次感染は、8月~9月頃にして9月頃から発病します。
岐阜県病害虫防除所の落葉病へリンク
円星落葉病
5月から7月頃に感染して2~4ヶ月後の潜伏期間を経て発病します。
岐阜県病害虫防除所の落葉病へリンク
カキノヘタムシガ
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ハマキムシ
岐阜県病害虫防除所のハマキムシ類へリンク
カメムシ
7月から8月ごろに果実に吸汁されると、へたをのこして落下します。
8月下旬以降に吸汁された柿は、落下せず果実の吸汁された部分は黒ずんだ斑点として残ります。
発生予察情報を確認し防除に努めましょう。
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フジコナカイガラムシ
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イラガ類
年1~2回発生。触れると刺されて激しい痛みがあります。
一番小さい幼虫は、1枚の葉に50匹位集まっていますが、成長とともに広範囲に広がって葉を食べつくしてしまいます。
アメリカシロヒドリ
アメリカシロヒドリは7月~9月に発生し、くもの巣の様な巣を作ります。くもの巣の何倍も強力で、人の指で突いても破れない位で、巣の中で富有柿の葉を食い荒らしています。赤い矢印がアメリカシロヒドリの実物大です。巣を発見したら、巣全体を切り取り焼却するのが、最も効果的な防除方法です。
ヒメコスカシバ・フタモンダラメイガ
幼虫は、柿の樹皮の下を食害します。主枝や亜主枝を一周されると枝が枯れてしまします。
一部食害だけでも、強風(台風)により折れやすくなります。
ヒメコスカシバとフタモンダラメイガの食害の対策
①冬季には、粗皮下で越冬する害虫の越冬数を減らすため、
粗皮削りを行いましょう。
②
フェニックスフロアブルの高濃度散布を4月に行い越冬世代を減らしましょう。
③ヒメコスカシバのオスとメスが交尾のためにフェロモンで交信するのを攪乱(妨害)して、次の世代のヒメコスカシバの発生を抑える効果のある商品として性フェロモン剤(商品名:
スカシバコン)があります。
性フェロモン剤を封入したポリエチレンの細管、針金状の製剤で長さ約20cmです。左下の写真のように柿の枝に取り付けて使用します。成虫発生前の4月~5月上旬に10a当たり。50本程度(約5000円)取り付けます。
スカシバコン 4月~5月:性フェロモン剤(商品名:スカシバコン)の設置。
カキづくりQ&A 現場の普及員が答える問答集
富有柿 Q&A 柿作り農家も参考にしているすぐれ本!!大野農園でも平成9年に購入し、柿作りに活用しています。
主な内容は、柿の品種と産地、柿の木の植え方と整枝剪定、摘蕾摘果と大玉生産、土壌管理と肥料、病害虫防除、果樹園の除草、柿の接木、柿の新技術情報など、柿の全般にわたり平易に解説されています。
「富有柿の里」の富有柿センターで販売中。
著者 棚橋 武治さん A4版160ページ 税込み価格 1,800円です。
お問い合わせは富有柿センター ℡058-323-4511までどうぞ。
この本は富有柿センターにご了解いただき掲載しました (平成20/10/02)